昭和42年2月17日 最高裁第二小法廷 昭41(オ)783号

   主  文

 原判決主文第二および第六項を破棄し、養育料の求償請求に関する控訴を棄却する。
 その余の部分についての上告を棄却する。
 訴訟の総費用を二分し、その一を上告人の負担とし、その一を被上告人の負担とする。

   理  由

 上告代理人石川実の上告理由第一点について。
 民法八七八条・八七九条によれば、扶養義務者が複数である場合に各人の扶養義務の分担の割合は、協議が整わないかぎり、家庭裁判所が審判によつて定めるべきである。扶養義務者の一人のみが扶養権利者を扶養してきた場合に、過去の扶養料を他の扶養義務者に求償する場合においても同様であつて、各自の分担額は、協議が整わないかぎり、家庭裁判所が、各自の資力その他一切の事情を考慮して審判で決定すべきであつて、通常裁判所が判決手続で判定すべきではないと解するのが相当である。本件において通常裁判所である原審が分担の割合を判定したのは違法であつて、この点に関する論旨は理由があり、原判決の求償請求を認容した部分は破棄を免れない。そして、原審の認定したところによると、未だ分担についての審判はないというのであるから、上告人の扶養義務は具体的に確定していないものというべく、被上告人の求償請求は理由がない。よつて該請求を棄却した一審判決は、理由は異なるが結論において正当であり、この部分についての控訴は棄却すべきものとする。
 同第三点について。
 上告人が本件物品を現に占有している旨の原判決の事実認定は、挙示の証拠関係に照らして是認しえなくはない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用することができない。したがつて、物品の引渡請求に関する上告は棄却を免れない。
 よつて、上告理由第二点についての判断を省略し、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、九二条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)

扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の扶養分担額は、協議がととのわないかぎり、家庭裁判所が審判で定めるべきであつて、通常裁判所が判決手続で定めることはできない。