文芸春秋社は「国家」ではない。

仮に憲法論として、プライバシー権が13条で基本的人権と解されるとしても(実務多数派ではそうでないことは上述のとおり)、基本的人権を国家権力でもない一出版社に主張すること自体無理がある。
憲法論では「私人間効力」というのだが、判例では認められておらず、ただ

憲法の右各規定は、同法第三章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。

場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。そしてこの場合、個人の基本的な自由や平等を極めて重要な法益として尊重すべきことは当然であるが、これを絶対視することも許されず、統治行動の場合と同一の基準や観念によつてこれを律することができないことは、論をまたないところである。

最大判昭和48年12月12日三菱樹脂事件

この判決ほど間違って理解されている判決も珍しい。